キャンベルハムスターの毛色遺伝を学ぶ。

2019/02/06

ハムスターの生態 ハムスター知識

 この記事はキャンベルハムスターの毛色の遺伝について書いてありますが、繁殖を推奨する目的ではありません。不幸な子を生み出さない為にも、繁殖を考えてる方はしっかり勉強して責任をもって行ってください。 


 ハムスターを飼育し始めの頃、繁殖に興味のない僕はもちろん遺伝にも興味はありませんでした。しかし、キャンベルハムスターの飼育歴が長いベテランさんから、色々キャンベルについて教えていただいてるうちに、少しずつ彼らの毛色に興味を持ち始め、遂に毛色遺伝について読み始めました。

 キャンベルハムスターの毛色は基本の5色の遺伝子記号を覚えて、あとはそれらを混ぜて色を生み出すような感覚だったので、比較的簡単に覚えることができました。しかし、その色の子が生まれるための配合が理解できず、すぐにつまずいてしまいました。自分なりに調べてはみたものの、あまりにも基本中の基本なのか、僕の疑問に答えてくれる資料が見つからず、藁にもすがる思いで、カナダのブリーダーさんにメールをしたりもしました。ブリーダーさんには「参考になる書籍を教えて欲しい」と尋ねたのですが、返事が来たのは数ヶ月後で、さらに内容は僕がいつも参考にしているリンダさんのページを勧めるそっけないものでした。

 結局、僕の疑問に答えてくれる資料は見つからず、毛色のページを作ってから何も進展させることができず、半年以上放置になってしまいました。そんな中、先日、ハムスター友達の方がねこ田さんのホームページを見つけてくださって、やっと引っかかっていた謎が解けたのです。嬉しくて一日中、遺伝のことを色んな人に手当たり次第に話しまくり、それでも飽き足らず、ねこ田さん本人に唐突なお礼のメールまで送ると言うほどテンションでした。

 さて、前置きが長くなってしまいましたが、この記事で少しでも僕みたいに悩んでる方の手助けになればと思い、僕が混乱した点をピックアップして解説していこうと思います。ただ、僕はねこ田さんほど上手に説明する器量は無いので、まずは彼女のページを参考にしてください。そして、キャンベルの毛色に関しては毛色のページをご覧ください。

遺伝の基本

  • 大文字は優性、小文字は劣性を表す。 
  • 劣性の色は2つ揃わないと発現しない。
  • 遺伝子は親から子へ1つずつ渡される。
 という基本は中学の理科も少し覚えていたのですんなりわかりました。 あのエンドウマメを使った実験で有名なメンデルの法則ですね。(因みに、ここでは馴染みの深い『優性』と『劣性』と言う言葉を使用していますが、新しい『顕性』と『潜性』の方が遺伝を考える上では理解しやすいと思います。『劣性』は劣っているのではなく『現れにくい遺伝子』と考えてください。 )

 さて、これをキャンベルハムスターに当てはめましょう。

 ここに <A/a>の遺伝子を持ったハムスターと<a/a>の遺伝子を持ったハムスターがいます。<A/a>のハムスターは劣性遺伝子のa(ブラック)を1つしか持っていないのでノーマルの毛色です。<a/a>はaの遺伝子を2つ保持しているのでブラックの毛色になります。この2匹を配合すると、何色の毛色のハムスターがどの割合で生まれてくると予測できるでしょう?

 絵で表すとこうなります。
 確率的にはブラックとノーマルが2分の1で生まれると言う予測がつきますね。

 表にすると次の様になります。
A a
a A/a a/a
a A/a a/a

ころぱぱがつまずいた遺伝

❶ノーマルの親ハムがそれぞれ別の色の劣性遺伝子を1つだけ持っていたらどうなるの?


 親ハムスターは<A/a>の遺伝を持つ子と<B/b>の遺伝を持つ子にしましょう。両方とも劣性遺伝子が1つずつしかないのでノーマルの見た目になります。この2匹を配合したらどうなるのか。表を作ってみましょう。
A a
B A/B a/B
b A/b a/b
 僕はまずここでつまづきました。この表にある全ての遺伝子の組み合わせが何色なのか全く理解できなかったのです。<A/B>は両方とも優性?そもそもAとBは何が違うんだ?<a/b>って両方とも劣性が1つずつだけど、どうなってるんだ?と頭を抱えてしまいました。

❷違う毛色のハムスターを親として配合したらどうなるの?


 違う毛色のハムスターなので、ブラックとオパールを配合することにしましょう。色が毛色に現れると言うことは、同じ劣性遺伝子を2つ保持していると言うことなので、ブラックは<a/a>オパールは<d/d>を保持していることになります。表にあらわすと下のようになります。
a a
d a/d a/d
d a/d a/d
 全員<a/d>の遺伝子になりました。しかし、この遺伝子を持ったハムスターが何色になるのかが全く理解できず、頭をさらに深く抱えました。

❸親から1つずつしか遺伝子をもらえないのに、どうやって複数遺伝子を組み合わせるの?


 先ほどのブラックとオパールの表の通り、2色のハムスターを配合しても、親からは1つずつしか遺伝子がもらえないので、<a/d>の子しか生まれてこないことになります。では、両方の毛色の遺伝子を保持する2種遺伝のブルー<a/a d/d>はどのようにして生まれてくるのでしょう?


疑問解明


 僕がつまずいた事は遺伝を知っている人にとっては逆に首を傾げてしまう様な事かもしれません。ですが、もし、僕みたいに入り口でつまずいてしまっている方の役に立てれば幸いです。


1.大文字は『劣性遺伝子がない』時に使う。

 まず、キャンベルの毛色に関しては、大文字が優性と考えるのではなく、『劣性の遺伝子がない』と言う意味として大文字を使用します。このことから、劣性遺伝子が1つしかない場合はA(劣性なし)/a(劣性あり)と表記し、全く入ってない場合はA(劣性なし)/A(劣性なし)と表記します。

2.発現していない色は、劣性遺伝子が2つ揃ってない組み合わせで保持している。

 ノーマル以外の毛色が発現するには、劣性遺伝子が2つ揃った組み合わせを保持していないといけません。例えば、ブラックの毛色はaの劣性遺伝子が2つ揃った<a/a>がないと現れません。だからと言って、ブラックのハムスターが<a/a>だけを保持しているわけではないのです。ただ、別の毛色の劣性遺伝子が2つ揃ってないだけなんです。

 例えば、ここに1匹のかわいいキャンベルハムスターがいるとします。この子の保持している遺伝子の組み合わせを[a/a B/b C/C D/D P/p]としましょう。この場合、劣性遺伝子が2つ揃っている組み合わせは<a/a>だけで、他の遺伝子の組み合わせは両方大文字だったり、劣性遺伝子が1しかない組み合わせです。このことから、劣性遺伝子が2つ揃っているブラックの遺伝子<a/a>だけが発現されるのです。

 そして、劣性遺伝子が2つ揃った組み合わせが1つもない時はノーマルの毛色が現れます。

例1) 全く劣性遺伝子が入ってない場合
A/A B/B C/C D/D P/P

例2)いくつか劣性遺伝子が入っているけど、2つ 揃ってる組み合わせが無い場合
A/a B/b C/C D/d P/P

3.同じアルファベット同士くっつく。

 前述でもわかる通り、発現している毛色以外の遺伝子もちゃんと保持しているので、違う毛色のハムスターたちを配合する時は、発現している毛色の遺伝子以外の遺伝情報も調べて、同じアルファベット同士を掛け合わせなくてはいけません。

 詳しい例は下の『❷違う毛色のハムスターを親として配合したらどうなるの?』を参考にしてください。

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 とりあえず、ここまで理解はできたでしょうか?それでは、先ほど紹介した僕がつまずいた事項を1つずつ解いていきましょう。

❶ノーマルの親ハムがそれぞれ別の色の劣性遺伝子を1つだけ持っていたらどうなるの?


 まず、順を追うために、それぞれの遺伝子情報を書き出してみましょう。

 父ハムスターも母ハムスターも、1つだけしか劣性遺伝子を持っておらず、この劣性遺伝子は別の色だということなので、<A/a>の遺伝を持ってる子と、<B/b>の遺伝を持ってる子を例として見ていきましょう。<A/a>のノーマルのハムスターの毛色遺伝子は[A/a B/B C/C D/D P/P]なり、<B/b>ノーマルのハムスターの方は[A/A B/b C/C D/D P/P]となります。
 ここで、それぞれの遺伝子から可能な遺伝子パターンを取り出します。それぞれのアルファベットの組から、1つずつ遺伝子が取り出されるので、分割すると[A/a B/B C/C D/D P/P]からは<A B C D P>と<a B C D P>の2パターン、そして、[A/A B/b C/C D/D P/P]からは<A B C D P>と<A b C D P>の2パターンになる事がわかるでしょうか?これは優性と劣性が混ざった組み合わせが多いほどパターンが増えます。例えば、ノーマルの子が[A/b B/b C/C D/D P/P]の遺伝子を所有していると、パターンは一気に<A B C D P><a B C D P><A b C D P><a b C D P>の4パターンに増えます。

 さて、話を戻しますと、<A/a>の子の遺伝子情報<B/b>のこの遺伝子情報から、同じアルファベット同士を掛け合わせるので、表で表すと下の様になります。
A B C D P a B C D P
A B C D P A/A B/B C/C D/D P/P A/a B/B C/C D/D P/P
A b C D P A/A B/b C/C D/D P/P A/a B/b C/C D/D P/P
 この表から、同じ劣勢遺伝子が2つ揃ってる組み合わせがないので、全ての子供がノーマルとして生まれてくることがわかるでしょうか?これをもっと見やすくするために大文字の組み合わせの[C/C D/D P/P]を省略しても構いません。

 僕が混乱した理由は、目にした全ての資料が、優性(大文字)同士の組み合わせを省略してあったため、自分で組み合わせてみた際に<A/b>や<a/b>と言ったように違う毛色の遺伝子同士も組み合わせてしまっていたからでした。

❷違う毛色のハムスターを親として配合したらどうなるの?


 この条件だけだと他の遺伝子がどうなっているのか分からないのですが、とりあえずシンプルに考えるために、他の毛色の劣性遺伝子を持ってないことにしましょう。

 そうすると、 ブラック[a/a B/B C/C D/D P/P]とオパール[A/A B/B C/C d/d P/P]と言う遺伝子を持つハムスター達の配合になります。ここで必要になるのはA系列とD系列だけなので、この2組を抜き取って表を作りましょう。
a  D a  D
A  d A/a  D/d A/a  D/d
A  d A/a  D/d A/a  D/d
 表からこれも全てノーマルの子が生まれることになりますね。

❸親から1つずつしか遺伝子をもらえないのに、どうやって複数遺伝子を組み合わせるの?


 ここまで読んでくださっと言うことは、全ての毛色の遺伝子から1つだけではなく、1組につき1つずつしか遺伝子をもらえないだけと言うことを理解していると思うので、その前提で話を進めていきます。
 
 この組み合わせの表には、折角ですので上記で出来たノーマルの子[A/a D/d]2匹の遺伝子例を使うことにしましょう。わかりやすい様に劣性遺伝子が組みになっているマスは色を変えてあります。
A  D A  d a  D a  d
A  D A/A D/D A/A D/d A/a D/D A/a D/d
A  d A/A D/d A/A d/d A/a D/d A/a d/d
a  D A/a D/D A/a D/d a/a D/D a/a D/d
a  d A/a D/d A/a d/d a/a D/d a/a d/d
 この表で見つけた組み合わせの[A/A D/D] [A/a D/d] [A/a D/D] [A/A D/d]は全てノーマルなので、ノーマルが生まれる確率は9/16となります。

 1組でも劣性が揃っていればその毛色が優先して色が出るため、ブラック[a/a D/D] [a/a D/d]とオパール[A/A d/d] [A/a d/d]の確率はそれぞれ3/16になります。

 そして、最後に1/16の確率でブルー[a/a d/d]が生まれてきます。

 どうでしょう、少しは謎が解けましたか?

 実際の配合では隠れて持っている劣性遺伝子などもあるので、予想をしてなかった色の子が生まれることもありますし、隔世遺伝もあるので、それも考慮してください。

他の表記

 ここまでに触れなかった表記例として『ー(ハイフン)』を使ってる表記をたまに見かけます。例えば[A/- B/- C/- d/d P/-]の様に。これはハイフンの所が大文字でも小文字でも毛色に影響がない時に使います。この例ですとハイフンの所が大文字でも小文字でも2つ揃っているのは<d/d>だけなので毛色がオパールだとわかりますね。

 また、ブリーダーではなくペットショップや保健所から連れて帰って来て、親の遺伝子情報がわからない時にも使います。コロの場合は[a/a B/- C/- D/- P/-]となりますし、チロは[a/a B/- C/- d/d P/-]となります。

おわりに

 何度も書きましたが、この記事がキャンベルハムスターの遺伝を学びたいけど、僕みたいにつまずいてしまっている方の手助けになれば幸いです。自分なりに遺伝の仕組みを頭で理解できたつもりですが、言葉にすると表現が難しく、適切でない書き方をしてしまってるかもしれいません。もしお気付きの時は指摘していただけると嬉しいです。

 冒頭にも書いた通り、この記事はキャンベルハムスターの繁殖を推奨するために書いたわけではありません。もし、繁殖を考えてらっしゃる方がいましたら、毛柄の遺伝子もしっかり勉強してください。配合で悲しい子を生み出してしまう要因になるのは毛柄の遺伝子が関係しています。繁殖をする前にしっかりと勉強をして、くれぐれも不幸な子供を生み出させないでください。

おまけ

色々資料を探している時に、自分で表を作らなくても遺伝の計算をしてくれるサイトを見つけました。使いこなすには遺伝の事を理解してなくてはいけませんが、載せておきます。


参考文献